研究概要 |
歯根膜感覚の鈍磨は,重度のブラシズムを自覚する者において臨床的に観察されることがある.過去に歯根膜感覚の定量化を試みた研究は認められるものの,歯根膜機械受容器の応答に着目して歯根膜感覚を定量化した研究はみられない.本研究の目的は,1)歯根膜感覚閾値測定用荷重装置を作製すること,2)non-bruxerにおける歯根膜感覚閾値特性を検討すること,3)non-bruxerとbruxerの歯根膜感覚閾値を比較検討すること,とした. 歯根膜感覚閾値測定用荷重装置には,弾性発泡ポリマー製荷重発生部が内蔵され,被験歯牙に対する刺激速度が可及的に遅くなるものとした.これにより歯根膜機械受容器由来の歯根膜感覚閾値を検出することができ,客観性および再現性を備えた歯根膜感覚閾値の定量化が実現できた. non-bruxerにおける歯根膜感覚閾値は,上記荷重装置を使用し,non-bruxer 18名の左側上顎側切歯を被験歯牙として,歯根膜感覚閾値の日内および日間変動の有無と一時的な過重負担による閾値の変化に関して検討を加えた.その結果,non-bruxerにおいて日内および日間変動は認められなかったが,一時的な過重負担により閾値の増加が認められた. non-bruxerとbruxerにおける歯根膜感覚閾値の比較検討は,non-bruxer 10名とbruxer 10名を対象として行った.夜間ブラキシズムの有無の確認を夜間咬筋筋電図解析により行った.その後左側上顎側切歯に関して,上記荷重装置による閾値計測およびocclusal facetの観察を行った.その結果,bruxerの歯根膜感覚閾値はnon-bruxerに比べて有意に高い値を示した.また,全被験者において著明なocclusal facetは観察されなかった.
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