研究概要 |
日中のクレンチングをコントロールし、ブラキシズムによる顎関節症の治療法としての咀嚼筋筋電図(EMG)バイオフィードバックについて検討を行った。平成13年度は小型化した装置の開発を行い、さらに健常者10名を対象にフィードバック信号発生のための閾値設定について検討を行い、最大咬みしめ時の20%のEMGが4秒間持続した場合がもっとも適中精度が高いことを報告した。平成14年度は完成した小型化バイオフィードバック装置を用い、健常者34名を対象に5時間連続記録を行い、個人ごとに最適な閾値を設定する必要があること、そのためにはベースラインデータ記録が不可欠であることを報告した。平成15年度は実際にクレンチング習癖のある18名の被験者を対象として、咀嚼時など機能運動とクレンチングなどの非機能運動のEMGが識別可能となりうる閾値を有効な閾値とみなした。前年度と同様に、日常生活環境下における5時間連続のEMG計測を行った.最大かみしめの10,20,30%の3段階の筋活動量と筋活動持続時間(1〜9s)を組み合わせた27通りの設定閾値について適中精度を調べた.その結果,30%MVC-EMGで筋活動持続時間2sの組み合わせのときの閾値が81.3%と最も高い適中精度を示した.しかし,この閾値が実際に有効な閾値として検出された被験者は18人中9人(50%)であった.このことから,全員へ共通な閾値の設定を行うよりも,個人ごとにベースラインデータを確認し,その傾向やクレンチングの病態を把握したうえで閾値設定を行うことが望ましいといえる.そこで個人ごとに妥当性ある閾値設定を試みたところ,18人中16人(88.8%)に対し有効な閾値の設定が可能であった. これら一連の研究結果から,筋活動量と筋活動持続時間を組み合わせた閾値を設定することで,日常生活環境下において効率の良いEMG-BF療法が行えることが示唆された.
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