研究概要 |
本研究では、固形癌内部環境に発現するHIF-1αが細胞増殖、血管新生及びアポトーシス調節機構にどのように関与するかを明らかにし、口腔癌に対するHIF-1αを標的とした分子標的治療の可能性を追求する。 各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HSC2,HSC3,HSC4,KB,T3M1,KOSC3,SAS,HO1-u1)を培養し、酸素分圧10%以下でHIF-1αタンパクの発現が認められ、経時的タンパク発現の検討においては低酸素環境下6時間後から72時間後までHIF-1αタンパクが発現していた。 低酸素環境下(1%O_2)でのそれぞれの細胞株の細胞周期調節因子(p53)に明らかな差は認められなかった。血管新生因子(VEGF)はタンパク誘導が認められた。 CDDP感受性試験にて低酸素環境下において各濃度のCDDPに対する感受性が亢進し、IC_<50>の低下が認められた。しかしながら、ADM,BLM,5-FU, TXLにおいては低酸素環境下での抗癌剤高感受性化は認められたかった。また、各細胞株においてCDDP処理24時間後にG2-M期に細胞周期の蓄積がみられるが、低酸素環境下でCDDP処理したものはG2-M期の集積が減少した。 以上より口腔癌扁平上皮癌のHIF-1α蛋白の発現は癌化学療法におけるCDDP感受性の予知因子になり得ると考えられ、さらに追求することにより口腔癌を含む固形癌のHIF-1αを標的とした分子標的治療が可能になるものと考えられた。
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