研究概要 |
本研究では手部模型を用いて手部表面に生じる圧力から手部全体に作用する流体力を推定する模型実験とその結果をもとに水泳運動中に手部で発揮する流体力を推定する方法論の確立を試み,泳者の手部において発揮される推進力をリアルタイムで評価できるシステムの実用化に成功した.以下に本研究で得られた結果の概要を示す. (1)人体手部の中手指節関節上の8点における圧力分布データから算出した代表圧力値と手部全体に作用する流体力との間に高い相関関係が認められた.このことから,中手指節関節上の8点に小型圧力センサーを装着して,圧力を計測することによって,手部に作用する流体力を推定することの妥当性が確かめられた. (2)水泳運動中の手部に対して垂直に作用する代表圧力値Pvを次式に代入し,さらに手部平面積Sを乗じることによって,手部に対して垂直に作用する流体力Fvが算出可能である.Fv=(1.339×Pv-116.150)×S (3)本測定方法の有効性が確かめられたことから,従来の方法と比較して泳者が手部で発揮する流体力を迅速かつ正確に選手や指導者にフィードバックすることが可能となった.今後は,本測定システムを用いて,さまざまなレベルや種目における泳者の推進力を測定してデータベース化し,熟練したコーチでなくとも本測定システムを用いれば技術を客観的に評価できるソフトウェアーを提供していきたい.
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