研究課題
基盤研究(B)
核酸の多様な高次構造形成に関する情報は、広範囲の研究に不可欠なものであるために、重要視されている。しかしながら、核酸の塩基対認識や特異構造形成における周囲の環境因子の影響は未だ解明されておらず、これが応用研究の進展を妨げている。そこで本研究では、さまざまな条件下で核酸のハイブリダイゼーションの最適化条件を予測できるように、核酸の特異構造形成に及ぼす環境因子、特に金属イオンとの関係を、分子レベルで物理化学的に考察することを目的とした。具体的には、(1)興味深い機能をもつ核酸の特異構造と機能核酸に対する金属イオンの役割を定量的に解明し、さらに(2)金属イオンの二重鎖、三重鎖、四重鎖核酸の構造に及ぼすエネルギー的寄与を予測し得るパラメータを開発し、得られたパラメータのデータベースに基づき、(3)特定の溶液組成条件下における、一塩基多型や高次構造検索の最適な検出法を構築するという方針で研究を遂行した。その結果本研究の成果として、核酸の平行/逆平行二重鎖、パラレル/アンチパラレル三重鎖、Gカルテット/Iモチーフ四重鎖構造など、多様な構造の安定性に関してどのような金属イオンがどの程度の影響を与えるかを定量化することができた。また、これら核酸の高次構造に対する金属イオン、特に一価金属イオンの影響が、共存する溶質分子の濃度によってどのように変化するかを定量化することもできた。多様な核酸構造に対する金属イオン効果のデータベースを参照することで、様々な溶液条件下での核酸構造の熱力学的安定性が予測できる。従って、本研究で作製したデータベースは、広い応用研究で有用な情報を与えると考えられる。
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