研究概要 |
平成13-14年度の研究により、長年の懸案であったアルツハイマー病アミロイドαセクレターゼの本体がついに明らかになった。ADAMファミリーメタロプロテアーゼはヒトゲノムによれば51種類存在するが、そのうちADAM2,9,10,12,17,19,33の6種類についてcDNAをクローニングし、細胞に導入することによってαセクレターゼかどうかを判定した。その結果、ADAM9,10,17,19の4種類にαセクレターゼ活性が認められた。特にTPAによって活性化されるregulatoryな活性はADAM17が担っていることがわかった。次に、これらのADAMについて21~23merから成るdsRNAを合成し、内因性αセクレターゼ活性がヒト脳よりも強いグリオブラストーマA172細胞に加えたところ、ADAM9,10,17のdsRNAを加えたときαセクレターゼ活性が阻害された。これから、A172細胞のαセクレターゼは、少なくとも3種類のADAM酵素によって担われていることが明らかになった。これは世界で初めての重要な知見である。 ADAMファミリーの生理機能と基質選択性については、ほとんど知見が得られていない。そこで、APPを基質としないADAM12とAPPを基質とするADAM19との間でキメラコンストラクトを作製し、ADAMのどの部分がAPPとの親和性に関係しているかについて実験を行った。現在のところ、膜貫通部位からC末端の細胞質部位が特異性の決定に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。
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