研究概要 |
様々な細胞外刺激が受容体を介して引き起こす細胞内シグナル伝達において主要な役割を担う蛋白質リン酸化反応は、蛋白質リン酸化酵素および脱リン酸化酵素の綿密な連携により制御されている。一般に広い基質特異性を示すこれらのシグナル伝達因子の作用に特異性を与える制御として、セカンドメッセンジャー刺激に対応した活性化という時間的制御のほかに、基質の局在する細胞内微小環境へのターゲッティングという空間的制御も重要であることが知られている。このようなターゲッティングの一部は、シグナル伝達因子と結合し、かつ特異的な細胞内局在をするアンカリング蛋白質と呼ばれる蛋白質を介して行われることが明らかになりつつある。 本研究では、プロテインキナーゼC(PKC)関連酵素で低分子量GTP結合蛋白質Rhoの標的蛋白質の一つであるPKNの機能について解析する過程で見出したPKN結合蛋白質CG-NAP (centrosome and Golgi localized PKN-associated protein)について、そのアンカリング蛋白質としての機能を解析し、以下の結果を得た。 1.CG-NAPは、中心体およびゴルジ体に局在する分子量約450KDaの巨大coiled-coil蛋白質で、一部中心体局在蛋白質として知られるpericentrinと相同性を有していた。 2.本蛋白質がPKNのみならず他の蛋白質リン酸化酵素(PKA, PKCε)や脱リン酸化酵素(PP2A, PP1)などの複数のシグナル伝達因子と特異的に結合する新規アンカリング蛋白質であることを明らかにした。 3.ゴルジ体におけるPKCεのリン酸化による成熟の場をCG-NAPが提供している可能性を示した。 4.中心体においてCG-NAPはγ-チューブリング複合体と結合することにより微小管形成開始の場を形成している可能性につき詳細な解析を行った。 5.各種欠損変異体を用いた解析により、CG-NAPの中心体への局在を規定している領域を同定した。また、CHO細胞をヒドロキシウレア処理することにより中心体の複製を観察できる系を確立し、この系を用いて、各種CG-NAP欠損変異体を導入することにより、CG-NAPの中心体複製における機能を解析した。
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