配分額 *注記 |
14,900千円 (直接経費: 14,900千円)
2003年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
2002年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
2001年度: 6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
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研究概要 |
細胞の増殖と分化には細胞間の相互作用が重要であり,細胞表面の糖鎖を介した相互作用はその中でも重要な機構の一つである。我々はβ-1,4-ガラクトース転移酵素-I(β4GalT-I)遺伝子KOマウスを作成して,生体内でのガラクトース糖鎖の役割を解析してきた。しかし,最近β4GalTが7つの遺伝子からなるファミリーを形成していることがわかり,β4GalT遺伝子群に役割分担があることがわかってきた。 そこで,β4GalT-I KOマウスの糖鎖構造を詳細に解析して,β1,4-結合のGalを定量し、糖鎖生合成における細胞種ごとのβ4GalT-I遺伝子の寄与を検討した。次に、β4GalTが生合成に関与することが知られているセレクチンのリガンド糖鎖について解析し、その生合成におけるβ4GalT-Iの寄与を検討した。さらに、セレクチンが関与する炎症反応について、β4GalT-I KOマウスの応答性を解析し、β4GalT-I遺伝子の欠損が炎症反応に与える影響を明らかにした。また、皮膚創傷治癒過程におけるβ4GalT-I遺伝子欠損の影響を解析した。以上の結果、β4GalT-Iはセレクチンのリガンド糖鎖の生合成に重要な役割を担っており、β4GalT-I KOマウスでは、その欠損のために炎症反応の減弱や皮膚創傷治癒過程の遅延が生じたと考えられた。 以上の解析はすべて交雑系のβ4GalT-I KOマウスを用いて行ったが、一方、近交系のβ4GalT-I KOマウスは胎生後期に致死となることを明らかにした。致死となる数日前から胎仔よりはむしろ胎盤の成長遅延が顕著に認められ、胎盤の異常が致死の原因であることが示唆された。このようにマウスの遺伝的背景により致死性が変化する理由として、他のβ4GalT遺伝子群による相補が考えられたので、他のβ4GalT遺伝子のKOマウスも作製して両者の役割分担の解析を現在進めている。
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