研究概要 |
人造血幹細胞の分離と体外増幅の効率的方法の確立 (1)日赤中央血液センターで臍帯血バンク用の保存には、細胞数が不足のため不適切と判断された人臍帯血を使用。このような場合、採取された臍帯血は研究用に利用される事があり得ることは前もって御家族の了解を得る。 (2)細胞はまずフィコールコンレイ液を使った比重遠心法により、単核細胞に分離する。必要によりナイロンカラムウールを通すことにより単球、マクロファージなどの付着細胞を分離除去する。 (3)CD34陽性細胞をミルテニー社製のダイレクトCD34アイソレーションキットを使用して分離する。 (4)CD34陽性細胞の回収率が不良の場合は、ベックマンコールター社製EPICS-ALTRA装置を使用して回収率を上げる試みも行った。 (5)CD34陽性細胞を各種サイトカインの組み合わせの下で培養する。従来IL3+IL6+SCFを含む組み合わせを基本とする報告が多かったが、近年FL,TPOの有効性を示す結果が報告されるようになった。このためTPO,FL,SCF,IL6,sIL6R等のサイトカインを組み合わせて培養を行い、効率の良い組み合わせと至適浪度を合わせて検討した。この結果、CD34陽性細胞の増幅をフローサイトメトリーで確認した。しかし、増幅効率は十分でないため、人骨髄の付着細胞を共培養に使用することや、サイトカインの組み合わせを変えることでCD34陽性細胞の効率的増幅培養法を検討した。 (6)サイトカインの組み合わせを変えることでCD34陽性細胞からCD41,CD42b陽性の巨核球系細胞に高率に分化させることができた。その際に関与する転写因子を網羅的に検討した。 (7)テロメレース遺伝子の触媒サブユニットであるhTERTの5'末端側にGFP遺伝子を結合させたプラスミドベクターを作成した。造血幹細胞の性質を持ったK562細胞にこのベクターを遺伝子導入し、細胞の分化や増殖に伴テロメレース蛋白の動きや局在を蛍光顕微鏡で観察できるようにした。これに関連した論文をCell Transplantation誌に発表した。今後は人臍帯血CD34陽性細胞を使って幹細胞の分化増殖に伴うテロメレース遺伝子の動きを、GFPを指標にして調べていく予定である。
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