配分額 *注記 |
12,800千円 (直接経費: 12,800千円)
2003年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2002年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
2001年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
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研究概要 |
自動車用あるいはモバイル用燃料電池などの実用化に向けての最重要問題の一つである水素貯蔵に関して,単層カーボンナノチューブによる極めて優れた水素吸蔵を示す実験結果が報告された.そこで,本研究では分子動力学法シミュレーションと水素吸蔵の実験とを比較して,その可能性を探ることを計画した.ところが,本研究開始後に,極めて優れた特性を示す実験的な報告の多くが,実は,金属などの不純物を含みかつ極めて微量なサンプルを用いたことに由来するとの観測が強まってきた.そこで,本研究では分子動力学法によるシミュレーションを続けるとともに,実験的な議論に決着がつけられように,高純度な単層カーボンナノチューブの大量合成方法の開発に重点をおいて進めた.大量かつ高純度の単層カーボンナノチューブの生成については,レーザー・オーブンカーボンナノチューブ生成装置から触媒CVD法に合成方法を変更して,試行錯誤をするうちにアルコールを炭素源とする触媒CVD法(ACCVD法)の開発に至った.従来は,単層カーボンナノチューブのCVD合成の炭素源分子としては炭化水素か一酸化炭素が用いられているが,本研究では炭素源としてアルコールを用いることによって,極めて高純度かつ高収率で単層カーボンナノチューブの合成が可能であることを明らかとした.また,Fe/Co微粒子をゼオライトに担持して触媒とする方法に加えて,シリコン基板や石英基板に極めて簡単なデップコート法で触媒金属を直接担持して,やはり高純度の単層カーボンナノチューブが合成可能であることを示した.この方法によって,金属触媒あたりの単層カーボンナノチューブの収率は最も高くできる.また,このようなCVD反応のメカニズム解明を目指して,金属クラスターとアルコールとの化学反応をFT-ICR質量分析装置にて検討するとともに,分子動力学法シミュレーションによって,金属クラスターと炭素源が反応し,単層カーボンナノチューブの前駆体となるキャップ構造が形成する過程についても検討した.一方,ナノチューブによる水素吸蔵特性に関しては,単層カーボンナノチューブのバンドル(7本)などの様々な幾何学形状のナノチューブと水素分子を含む系での分子動力学法シミュレーションを行い,常温においては米国エネルギー省(DOE)が自動車用燃料電池の水素吸蔵材料の目標として掲げる重量密度6.5wt%程度には遙かに及ばない重量密度しか実現できないとの結論を得た.
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