研究概要 |
双極性パルスパワーを用いた高効率気体分解処理について,放電処理の原理およびその有用性の実証を目指して2年間研究を実施した。 初年度には,波高値60kV,200nsの双極性パルスを発生できる電源装置をもつ気体放電処理システムを構築した。本装置を用いて,放電処理の基礎資料を得るために,NOx処理実験を行なった。NOx(N_2希釈のNOガス)を流量2l/minで放電処理容器へ給気し,これと同期して種々の繰返し周波数で双極性パルスを印加した。これにより,繰返し周波数10Hzの時に,NOx除去率85%を得た。これは十分実用に耐え得る値である。さらに、双極性パルスによるNOx処理の有効性について検討を行なうために,等しい入力電力を持つ単極性パルスを用いた場合の放電処理実験を行なった。しかしながら,今回の実験では双極性パルスよりも単極性パルスの方がNOx除去率は高い値を示した。これは、双極性パルス上で正電位から負電位への極性反転に60nsを要しており,この時間中に正電圧印加時に生成された電子の多くが再結合してしまった,すなわち,本来電子の拡散を目論んで印加した負電圧の効果が現れなかったためと考えられる。 引き続き第2年度には,NOx処理実験の結果をふまえて,光学観測による放電処理プロセスの解明を試みた。光学観測には,高速度カメラを用い,電極の軸上および横方向でのプラズマからの発光を撮影した。一連の観測結果から,パルス幅が50nsから100nsの電圧を印加する方法が最もエネルギー効率が高いことが明らかとなった。 しかしながら,今回の実験では,双極性パルスの負極性部分による電子の拡散効果が現れなかったため,当初予測していた結果が得られなかった。今後は,電源やパルス波形の最適化などを行い,双極性パルスによるNOx処理について再検討する必要があると考えられる。
|