研究概要 |
磁界の数値解析技術は,磁界分布を支配する方程式の離散化手法と,解析モデル内に存在する磁性材料のモデリング手法が融合されて,初めてその真価を発揮する.離散化手法に種々の工夫を凝らし,解析プログラムの高速化を図っても,磁性材料の磁気特性が適切に考慮されていなければ,得られる解の精度は低下し,機器の小形・高効率化設計のための十分な指針は得られない.そこで,電気・電子機器の主な磁気回路材料として用いられている電磁鋼板の磁気異方性(ベクトル磁気特性)を,二方向励磁型単板磁気特性試験器を用いて評価する標準的な方法を検討するとともに,得られた測定結果を磁界解析に適用して,その妥当性を検証するために,平成13年度〜15年度の3年間において,以下に示す各種項目について検討を行った. (1)計測システムの構築と測定精度の検討および改良 (2)各種電磁鋼板のベクトル磁気特性測定 (3)ベクトル磁気特性の近似法の検討と磁界シミュレーションによる検証および高速化 (4)変圧器および回転機モデルを用いた実用性の検討 測定に関しては,異方性の程度に関係なく,任意方向に対して,2T超の高磁束密度領域までの磁化特性が測定可能になった.再現性は,一次元方向の測定と同様に,±3%程度であり,実用上問題はないと考えられる.鉄損特性については,鋼板の材質および励磁条件に依存して,高磁束密度領域では十分な精度が得られない場合があるが,これは一次元方向の測定にも当てはまる共通の問題であることから,別途,検討の必要がある. シミュレーションに関しては,初磁化曲線により異方性を考慮する解析法を確立することができた.非線形反復計算時に,残差に着目して非線形解の更新の程度を制御する方法を導人することにより,異方性を考慮しない通常の非線形計算とほぼ同様な安定性を実現することができた.変圧器および回転機モデルに適用した結果,サ最近開発された二方向性電磁鋼板を使用し,磁路構成を工夫すれば,効率向上が可能であることが判明した.
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