研究概要 |
大地震に対して損傷を許さない耐震設計は経済的に困難であることから,現実的なコストで対策を行っていくためには,構造物内にエネルギー吸収能力に富む材料を戦略的に配置することによって多少の破損を許しながらも破壊モードを制御して被害を最小に抑えることを目指した耐震設計法を構築する必要がある.その具体的な方法として,制震・免震構造が活発に研究されている.本研究では,エネルギー吸収材料,特に免震・制震装置として応用が進んでいながら解析的モデル化が進んでいない高減衰ゴムをはじめとしたゴム系材料について合理的な性能予測法を確立し,材料レベル・デバイスレベルの設計を統合的に支援するシステムを構築することを目的とする.具体的には,(1)ゴム系エネルギー吸収材料を対象とした材料試験法の体系化と汎用的構成則構築法の確立,(2)材料構成側に基づいた装置レベルの大変形時の挙動予測と性能評価法の構築,(3)材料設計とデバイスレベルの構造設計の統合化と設計開発支援システムの構築を目指したものである. 研究成果としては,まず,免震支承の力学的特性について,微分方程式方現象論的モデルを改良して一般化することで,ゴム系エネルギー吸収材料に汎用的な構成則を提示した.その際,特に,地震時の性能評価への応用を念頭に,繰り返し履歴特性ならびに速度依存性のモデル化に特に重点をおいた構成則とした.また,得られた構成則をハイブリッド解析スキームに組み込み,一般化・汎用化することによって,免震・制震デバイスの精緻な性能予測法を構築した.それにより,ゴム系エネルギー吸収材料を用いたデバイスに典型的に見られる複雑な履歴挙動を示す大変形時の挙動予測と性能評価を実現した.さらに,構築された構成則と性能評価法に基づいて,材料特性とデバイスレベルの性能の関連を明らかにし,従来,経験と試行錯誤に頼っていたデバイスレベルの設計の合理化と統合化を実現した.
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