研究概要 |
我が国では交通事故件数が増加の傾向にあるが,その減少に向けて平成8年度から実施されている「特定交通安全施設等整備事業7ヶ年計画」において全国の事故多発地点を統一の基準で3,196地点選定し,「事故多発地点緊急対策事業」による重点的な交通安全対策を実施している.しかし,対策後の事故件数の変化に対する分析が十分に行われず,結局どのような対策が交通事故削減に効果があるのか,いまだ特定できていない.また,稀現象である事故そのものは分析できなくとも,そこに至る現象の解明などを目的にミクロな交通流現象や運転挙動を分析するためのプローブ技術も整備されつつある.以上を踏まえ本研究は,(1)統計分析からの対策による交通事故数削減効果の把握,(2)ミクロな運転挙動特性の分析を通じた安全対策の効果把握,の2点を研究対象とした. (1)では,対策の有無と各事故類型の事故減少数自体の関係に着目し,対策が事故減少数に与える効果を定量的に把握し,1)交差点のコンパクト化は,横断歩道横断中の事故を減少させるが,車両相互-左折時の事故を増加させる,2)右折リード線整備は,車両相互-左折時の事故を減少させる,3)右折レーン線整備は,車両相互-右折時の事故を減少させる,4)左折レーン設置は,車両相互-右折時の事故を減少させるが,横断歩道横断中の事故を増加させる,ことを明らかにした. (2)では,合流部などのギャップ選択の局面を対象に,ドライバーのギャップに対する判断プロセスを検討し,認知衝突時間,判断時間,操作時間,余裕時間,の4つの時間パラメータを定義することで,そのプロセスをモデル化し,その検証のために,複数の地点において,複数のドライバーにプローブカーで走行させる実験を行った.その結果,後続車や待ち時間の長いときに余裕時間が小さく操作時間が大きくなること,情報提供を行うことによって,判断時間の減少,余裕時間の増加という抽出され情報による効果である安全側への変動を確認することができた.
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