研究概要 |
従来,単結晶弾性率の測定には最低でも数mm角の大きさの試料が必要であるとされていた.本研究では,これまで主として誘電体の弾性率測定に用いられてきたブリルアン散乱による弾性率測定に着目した.ここでは検出感度,およびコントラストを向上させることによって金属など光に対して不透明な材料においてもブリルアン散乱スペクトルを得ることを目指し,さらに顕微鏡と組み合わせることによって数十μmの大きさの領域からの散乱スペクトルをえることを目指した. 装置全体の高効率化と小型化のため,従来用いられてきたアルゴンイオンレーザーを使用せず,近年急速に性能が向上し普及してきたレーザーダイオート励起固体レーザーを採用した.このレーザーの評価を行った結果,装置体積にして1000分の1以下,必要な電源容量100分の1以下であり,特別な電源施設,水冷を必要としないにもかかわらず,アルゴンイオンレーザーと同等の光出力と十分に狭いスペクトル線幅を有していることが示された.これによってブリルアン散乱測定系全体の大きさも10分の1以下の容積にまとめることが可能となった.ブリルアン散乱光の検出においても十分な低雑音性を維持しながら,量子効率が40%と一般的なものの2〜3倍の感度を持つ光電子増倍管を採用し,弱い散乱光を高いS/N比で検出することができるようになった. このように最新のデバイスを使用することでブリルアン散乱測定系を小型かつ高感度のものとすることができた.
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