配分額 *注記 |
9,200千円 (直接経費: 9,200千円)
2003年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2002年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2001年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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研究概要 |
基板バイアスが印加可能な高周波マグネトロンスパッタリング装置を用い,基板バイアスを変化させてBaTiO3薄膜を堆積させた。粉末ターゲットを用いることにより,堆積速度,結晶性の変化を与えることなく,膜の組成を化学量論組成に調整することが可能となった。基板バイアスを印加すると,逆スパッタにより堆積速度が低下したが,堆積膜の結晶性が向上した。このとき,{110}配向する傾向が確認された。印加する基板バイアスの平均負電位が大きくなるほど,また,スパッタリングターゲットへの投入高周波電力が高いほど,膜中のBa/Ti比が若干大きくなる傾向があることが明らかとなった。 ターゲットに得られる薄膜の組成が化学量論組成となるように混合比を調整した粉末ターゲットを用いて,チタン酸バリウム薄膜を誘電層とするキャパシタを形成した。300℃程度の低基板温度であっても,基板表面へのイオン衝撃により薄膜の結晶化が進行すると同時に比誘電率が増加し,一定以上のイオンエネルギーでは比誘電率が飽和する傾向が確認された.しかし,過剰にイオンエネルギーが大きくなると誘電喪失が増加していることも判明した。これはイオン衝撃により導入された結晶欠陥のため漏れ電流が生じているためと考えられる.また,ヒステリシスループを測定したところ,高い比誘電率を示した(110)配向の膜では強誘電特性を示すことも明らかとなった。 今後,誘電損失を低減させるため,用いるプラズマの電離密度を向上させ,照射イオンエネルギーを低減させると同時に照射イオン数を増加させることを目指した研究を行う必要があると考えられる。 以上のように,現段階では,メモリ用キャパシタ材料として不十分ではあるが,その可能性を見いだすことができた。プロセスの最適化により高い比誘電率と低い誘電損失との両方を実現させる可能性が示されつつあり,今後の更なる展開が期待される成果であると考えている。
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