研究概要 |
本研究では,焼却対象物質が一様でなく,比較的小型の焼却炉で間欠運転を行う産業廃棄物焼却処理施設を対象として,ダイオキシン類(DXNs)生成の直前に薬剤(硫黄含有チタニア)を添加することにより,積極的にダイオキシン類の生成を抑制するシステムを構築することを目的としている。初年度,実験室レベルで模擬ゴミであるPVC粒子を不完全燃焼させた実験において,消石灰(Ca(OH)_2)を33.2wt%添加することで残渣中のDXNs濃度を1/10以下に減らすことができた。しかし,近い将来の更に厳しい総量規制に対して,酸化チタンを添加したとしても本手法だけでは不十分であると判断した。そこで,最もDXNs濃度の高い飛灰に対して,高温加熱による高効率二次処理に着目した。しかし,500℃以上で加熱処理を行うと飛灰が固化してしまうため,従来の飛灰加熱処理は500℃以下の還元雰囲気で薬剤を添加して脱塩素化処理を行っている。しかし,従来法ではDXNsを脱塩素化したに過ぎず,十分な処理とは言えない。そこで,二年目は高温での固化機構を解明した上で,高温酸化処理の可能性について検討した。今回,固化には飛灰中の塩素が関係していると仮定し,飛灰中の塩素を高温状態で固定化できる薬剤として,水酸化ナトリウム(NaOH)およびムライトを選択した。そして,飛灰とNaOH(飛灰中の塩素と等モル分混合),またはムライト(重量比1:1)を添加し,700℃で加熱した結果固化が認められなかった。また,薬剤添加,無添加の試料を,処理前後でTG/DTA(熱重量/示唆熱分析計)およびXRD(X線回折装置)で分析を行った。その結果,飛灰では,消石灰と塩化水素との反応生成物として塩化カルシウム(CaCl_2)ではなく,CaClOHのピークがXRDの分析結果から検出された。NaOH添加の加熱後の試料はCaClOHに代わってNaClが,ムライト添加のそれはワダライトが生成していた。また,無添加の試料では,TG/DTAでは800℃からの冷却時に固化を示す発熱のピークが見られたが,薬剤添加の試料ではそのピークが見られなかった。また,加熱処理前後の試料中のDXNs濃度を調べたところ,未処理の試料(0.66ng/g-ash)と比較して,薬剤添加の700℃加熱で1/10^5以下に削減されており,薬剤添加は固化防止だけでなく,DXNs分解においてもメリットがあることが示された。
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