研究概要 |
環境との調和を目指す有機合成プロセスの一つとして,分子状酸素を温和な条件下で酸化剤として用いる手法の開発が要請される.Pd^<2+>/Cu^<2+>塩の組み合わせは酸素分子の活性化を引き起こす環境調和型触媒として広い用途を持つとの観点から,本研究では以下の目的を設定した.すなわち,Pd-Cu-複核錯体触媒の銅原子上で分子状酸素を活性化させ,パラジウムに配位したアルケンにこの酸素分子を移行させる新手法を開発する.このために,既に開発したPd^<2+>と銅塩とヘキサホスホルアミドを自己組織化させPd-Cu複核錯体を合成する方法を,種々のアミド化合物に展開し,Pd-Cu-アミド系化合物あるいはPd-Cu-尿素系化合物の複核錯体合成に成功した.この型の錯体を反応系内で発生させた触媒を用い,末端アルケンの分子状酸素による末端位酸化反応を1,2-ジクロロエタン溶媒中室温で行った.その結果,環状アリルアミドから対応するアルデヒドが収率及び選択性良く得られることが分かった.アルデヒド体の選択性は,環状アミドの員環数が,6>5>4員環と減少するにつれ低下した.さらに,PdCl_2(CH_3CN)_2とCuCl_2との組み合わせを触媒に用い,ジメトキシエタン(DME)中で単純アルケン(例えば1-デセン)にアルコール類を求核剤として反応させ,対応するアルデヒド体を得る方法を系統的に解析した.その結果,MeOH, EtOH, i-PrOH, t-BuOHと立体的なかさ高さが増加するにつれ,アルデヒド体の選択生成が増加した.しかし,同時に対応するアルデヒド体の収率も低下した.従って,t-BuOHを求核剤として利用するならば,パラジウム触媒の反応性を向上させることが今後の課題となる.
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