研究概要 |
欧米諸国における森林の健全度モニタリングでは目視によって樹冠透過度が評価されているが、観測者間の誤差が大きいことが問題となっている。本研究の目的は、開発した画像解析システムCROCOの実用化を図るため、カメラ機種および撮影時の天候条件の影響を明らかにするとともに,目視と比較したときのCROCOの精度を明らかにすることである。 まず,2001年7月〜8月に,スイス・Birmensdorf周辺に生立するトウヒ,モミ,ブナ,ナラの4樹種,合計80本を対象に4機種(機種A〜D)のデジタルカメラを用いて異なる天候条件で樹冠を撮影した資料を解析した。その結果,機種Aが他の3機種と比較して晴天順光時に過小推定の傾向があった。また,機種Bでは他の3機種と比較して晴天順光時にブナについてのみ過大推定の傾向がみられ,これは,葉部の輝度が高い画像が多いことが原因であった。さらに,機種Cについてはピンぼけ画像が原因と思われる有意差がいくつかの場合でみられた。これらのことから,解像度が100万画素程度の機種AとCではバラツキが大きいため,CROCOの利用に際しては300万画素程度の解像度をもつ機種が必要であることがわかった。 次に,ヨーロッパの12カ国の代表者による樹冠透過度の目視評価値とCROCOによる推定値との相関性を調べた。資料は1999年にスロバキアで行われた目視評価国際講習会で得られた画像であり,対象樹種はトウヒ,モミ,マツ,ツガ,ブナ,ナラであり,それぞれ15本が評価された。2国間の目視評価値およびCROCOとある国との相関係数および差の標準偏差を求め,各国およびCROCOの中央値を比較した結果,CROCOは目視評価よりもばらつきの小さい安定した値を与えることを明らかにした。
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