研究概要 |
山中から発見された胸椎と肩甲骨についてDNA分析を行い個人識別を試みた。材料は胸椎、肩甲骨、および推定される両親と弟の爪を用いた。また父親についてはDNA分析が困難であったという理由から末梢血を材料とした。その結果、HV1、HV2においては解析した全ての資料で塩基配列を決定することができ、母親、弟、胸椎はHV1、HV2ともに同一配列を呈し、Andersonとは合計8ケ所での塩基の相違を確認した。このうちHV1の16260と16286の変異についてはこれまでの報告でも各々1%以下の出現頻度とされている稀な変異であり、これらの8ケ所の変異をもつものはこれまでには報告されていない。以上より、この胸椎と母親の間には血縁関係の可能性が非常に高いことが推察された。解析したY-STR以外の6ローカス全てにおいてこの両親の異型接合型であった。上記Mitochondria DNAの解析結果から、胸椎と母親に親子関係が成立すると仮定した場合、この6ローカスから求めた父権肯定確率の総合確率は99.9%以上と算出された。さらにY-STRのDYS385も父親と同様の型であった。一方、付近から発見されたにも関わらず肩甲骨に関しては全く異なる人物であることが判明した。 coding regionにおける6ケ所のSNPsをAPLP(amplified product-length polymorphism)法により分析し、103サンプルの現代人APLP bandのパターンはA_1,A_2,B_1,B_2,B_3,B_4,C_1,C_2,C_3の9種類であった。またその頻度はA2が最も多く全体の42%近くを占めていだHaplogroupとして見た場合にAやBに比べてCは少数であったが、全体的にはA_2 41.8%を除けばB_1 15.5%、C_1 9.7%、C_3 10.7%となり比較的均一な分布である。 本研究において用いたサンプルは全て日本人であるため、確認できたhaplotypeはアジア人種に特徴的な傾向をしめした。
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