配分額 *注記 |
10,700千円 (直接経費: 10,700千円)
2003年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2002年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2001年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
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研究概要 |
各種造血器腫瘍細胞における2D7の発現分布について検討したところ,2D7は骨髄腫細胞やBリンパ系腫瘍細胞にのみ高発現していることが明らかとなった。これらの細胞における2D7の発現量は,正常の血液細胞と比較し極めて高値であった。さらに2D7遺伝子のクローニングを行い,この抗原がHLA class Iの一部であるHLA-Aであることを明らかにした。 次に2D7抗体を用いることにより,2D7の機能についての検討を行った。骨髄腫細胞株を2D7抗体と2次抗体の存在下に培養したところ,抗体量に依存して細胞死が誘導されることが明らかとなった。一方,正常の血液細胞に対してはこのような作用は認められなかった。そこで,より活性の高い抗体を開発する目的で,低分子抗体であるsingle-chain Fv diabodyを作製し,この抗体の活性について検討を加えた。2D7 diabodyは単独で2D7抗体よりも低濃度から強い細胞傷害活性を誘導し,骨髄腫の動物モデルを用いた実験においてもin vivoにおける抗腫瘍効果を発揮した。 さらに,各種シグナル伝達阻害薬を用い,2D7 diabodyの細胞傷害機構について検討を進めた。2D7 diabodyの作用はアクチン重合阻害薬により完全に抑制され,2D7 diabody処理後の細胞には著明なアクチンの凝集が認められた。すなわち,2D7 diabodyはリンパ系腫瘍細胞に特異的に高発現しているHLA-Aを認識し,従来のアポトーシスとは異なり細胞内のアクチン重合を誘導することにより,著明な細胞傷害を引き起こすことが明らかとなった。 以上の結果より,HLA-A(2D7)はリンパ系腫瘍の治療標的分子として機能するとともに,2D7 diabodyはリンパ系腫瘍に対する新たな抗体医薬として期待されることが示唆された。
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