研究概要 |
本研究は,骨のμX線CT画像の構造解析と超音波波形歪計測によって,非侵襲に骨の機械的強度を推定することを目的とする2年間の基盤研究であった.この背景には老齢化社会問題があり,老年層のQOL(Quality Of Life)の向上に関係する.骨の機械的強度は,質,量,構造の3要素からなると考えられる.そこで当初より,量と構造についてはμX線CT画像を質については超音波計測を新たに追加し,骨の機械的強度を総合的に調べる戦略を立てていた.また,1年経過した段階での成果から,強度推定の精度向上のためにμX線CT画像に混入するアーティファクトの軽減と,超音波による基礎計測による実験精度向上を重要視しサブテーマ化した.本研究の成果は以下の通りである. 1)CT再構成アルゴリズムにおいて,サイノグラム領域での適応フィルタリングと画像領域での閾値処理の再帰的適用によって,CT特有のアーティファクトは軽減した. 2)ラット頚骨のμX線CT画像に対し,アーティファクトの軽減処理を行い,非線形処理によって特徴ベクトルを取り出し,機械強度(最大荷重,破断力,軸変異,靭性,最大弾性力)の線形判別を行った結果,靭性以外は0.8程度の相関値で推定できた. 3)超音波計測は,位相を逐次シフトしたGabor波形の送受波を計測原理としているが,大変高精度な計測系が必要であることが判明した.このため,シミュレーションを中心に,この計測方式の可能性を確認した.
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