研究概要 |
初年度は,計測システムと加工システムの分離を目指し,当教室で開発した歯科用CAD/CAMシステムを用いて,臨床系講座において収集されたクラウンのケースを元にレーザ計測を行い,計測データをネットワーク経由で汎用の加工機に送信するシステムの検討を行った.本システムの計測データは両隣在歯のデータも含め平均で1.2MBあったが,ネットワークを介して授受するには無駄が多すぎるため,いったん計測器側のコンピュータで,この点群のデータをスプライン曲線のデータとして再構築処理を行うことで平均349.9KBとなり,元データの1/3程度まで減らすことができた.また,ネットワークには,設置場所に制限の少ないPHS回線を用いたが,計測後,データの送受信を経てコンピュータ画面上での確認が出来るまでに,約5分必要となってしまうことが分かった. それと共に,CCDカメラを用いた小型の歯列計測装置を試作した.これまでに我々が開発してきたCAD/CAMシステムでは,支台歯の三次元座標データを,ポイントレーザ変位計を用いて一点毎に収集する計測システムであった.そのため,高精度な計測ができる反面,作業模型全体を計測するには15分程の時間が必要であった.そこで,計測時間の短縮と形状再現性の向上を目的として,一度に沢山の情報を得られるラインレーザとCCDカメラを組み合わせた計測システムを試作し,レーザ変位計を用いた計測システムとの比較を行った.その結果,3分程でクラウン製作に必要なデータ収集を行うことが可能となった.また,計測可能な範囲が片顎模型全体となり,さらに大きな補綴物製作の可能性が見出された. 次年度には,新たに開発した計測器を用いて,歯科で日常的に行われている記録模型の採取と手作業による寸法測定しかなかった,歯列の三次元的な評価を行うソフトウェアの開発を行った.その結果,歯肉辺縁や咬頭頂などの部位で,画像表示に伴う最適化処理の工程で形状が不鮮明になってしまい,正確な座標測定ができない場合があり,今後,この最適化処理のアルゴリズムを検討しなおす必要があった.
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