研究概要 |
本研究では口臭の質および量を総合的に指標化することのできる,複数の金属酸化物半導体を備えた電子嗅覚装置の開発を目的とした。被検者55名の呼気をガスクロマトグラフィ,官能試験および電子嗅覚装置により測定し,測定方法間の評価値を比較したところ3種類(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチル)の揮発性硫化物濃度の総計と官能試験によるスコアとの間よりも電子嗅覚装置による予測官能スコアと官能スコアとの相関係数は比較的高い値を示した(r=0.71,p<0.0001)。これらの結果より、電子嗅覚装置は揮発性硫化物以外の成分をも認知して測定しているため官能試験によるスコアとの関連性が強い可能性が示唆された。次に、電子嗅覚装置による予測官能スコアと口腔内状態との関連性を調べた。性別,年齢,喫煙習慣,飲酒習慣,歯周病有病歯率、舌苔スコア(TCS)およびプラークコントロールレコード(PCR)を独立変数とし,3種類の方法による口臭測定の結果を従属変数として多重回帰分析を行ったところ,これらのモデルは予測官能スコアを37%,揮発性硫化物濃度を16%,官能スコアを32%説明していた。さらに,従属変数として予測官能スコア上位25パーセンタイルを用いて多重ロジスティック回帰分析を行ったところ,歯周病有病歯率、TCSおよびPCRのオッズはそれぞれ17.1,12.4,28.0(p<0.05)となった。以上の結果より、複数のセンサーをもつ電子嗅覚装置による出力は揮発性硫化物濃度と比して,ヒト嗅覚の認知パターンと類似している可能性が高く、さらにヒト嗅覚を利用した官能試験によるスコアよりも多くの口腔内状態と関係する情報を含んでいることが示唆された。
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