研究概要 |
今回,歯周組織局所における炎症性サイトカインの産生をコントロールすることで,歯槽骨吸収を防ぐ方法(ヒト型モノクローナル抗体を用いた病的骨吸収の予防法)の開発を行った.これまでの研究で,receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)は骨吸収を司る破骨細胞の分化誘導において必須なサイトカインであり,炎症性骨吸収において重要な役割を果たしていることが明らかとなっている.そこで,まず,RANKLに対するヒト型モノクローナル抗体の作成を目指した.リコンビナントRANKLをヒトリンパ球に体外免疫して,抗体を高生産する融合細胞株(融合パートナー細胞株)と融合させた.その後,抗体産生細胞のクローニングを行い,それぞれのクローンの抗体価をELISAで確認し,抗体産生能の高い複数のクローンを得た.さらに,抗体の特異性ををウエスタンブロットで確認した.次に,in vitroの培養系で,RANKLに対するヒト型モノクローナル抗体の効果を調べたところ,RANKLの活性を抑制する抗体が得られた.そこで,その抗体をin vivoで応用するために,実験動物モデルを作成して,エレクトロポレーション法で抗体を局所投与する実験系の確立を試みた.しかし,これまでのin vivoおよびin vitroの研究では,骨吸収の抑制傾向はみられたものの,確実な効果を実証するまでには至らなかった.一方,今回の研究の過程で,この抗体投与によって,マウスの歯周組織の血流に変化が見られた.そこで,これを客観的に評価する方法として,舌血流測定装置一式を購入して機器の改良を行った.血流と歯槽骨吸収抑制に関して,きれいな相関は見られなかったものの,今後の研究につながる実験結果が得られた.
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