研究概要 |
平成13年度には,真空チェンバを更新し,従来からの超伝導体Nbスパッタ用DCマグネトロンに加え,絶縁体とするAlおよび常伝導体Agを蒸発させる電子ビーム蒸着ガン,そして絶縁性を確実にするためのSiO_2成膜用RFマグネトロンを装備した.さらに,超伝導体検出器を製作するために,従来は基板をX-Y方向へ移動するX-Yステージを用いていたが,今回は基板をシャドーマスクに接近させるための駆動機構を持つX-Y-Zステージを製作した.まず,超伝導体膜であるNb膜の成膜条件をアルゴンガス圧を変えながら検討した.次に,絶縁体膜とするAlおよび常伝導体のAgの蒸着条件を検討した.最後に,SiO_2膜を成膜するための酸素を混入したアルゴン雰囲気の条件を決定した.本年度製作したX-Y-Zステージを用いることで,従来はシャドーマスクのパターンから約50μm程度あった膜のしみ出しが,およそ10μm程度と小さくなった.また,常伝導体(N)-絶縁体(I)-超伝導体(S)からなるNIS型超伝導体放射線検出器の有感面積を大きくする方法として,ヒートスイッチ法を考案した. 平成14年度にはNIS型超伝導体放射線検出器の動作が速い,磁場が不要などの特長を生かすため,エネルギー分解能がSIS型程度に向上させる方法を量子磁気干渉計(SQUID)を利用して3種類考案した:(1)非対称変調SQUID,(2)超伝導ループを用いたジョセフソン接合マイクロカロリーメーター,そして(3)rf-SQUIDマイクロカロリーメーター,である.これらは常伝導体吸収体と熱的に結合した常伝導層を含むジョセフソン接合を持つ.放射線が付与したエネルギーによる常伝導体の電子温度の上昇によるジョセフソン接合の臨界電流の変化をそれぞれSQUIDによって読み出す方式である.それぞれの方法により,動作温度100mKで1.5eVから5.8eVのエネルギー分解能が期待できる.
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