研究概要 |
膜蛋白質は疎水性が高く凝集を起こし易いため解析が困難である。本研究では,小胞体や細胞膜に存在する調節蛋白質や膜受容体を,機能を保ったままバキュロウイルス上にディスプレイさせ,相互作用や活性を測定する系の開発と,抗体作成による疾病の診断・治療への応用を目指した。本年度はG蛋白質共役型受容体(GPCR)であるロイコトリエンB4受容体(BLT1)と3量体G蛋白質の各サブユニットのリコンビナントウイルスを共感染させ,高親和性(Kd=0.25nM)の受容体をウイルス上にディスプレイさせることに成功した。さらにGαアイソフォームを別々に作成してウイルス上で再構成させることにより,BLT1がGiおよびGoに共役して高親和性受容体となることを実験的に証明した。このことは,様々なG蛋白質リコンビナントウイルスとのコンビナトリアル共発現により共役するG蛋白質パートナーを探索することが可能になったと考えられる。またエフェクター蛋白質であるアデニレートサイクレースも共発現させるとリガンド依存性の相互作用が観察されることを確認した。 アルツハイマー症の原因蛋白質と考えられているプレセニリンと複合体を構成しているニカストリンと呼ばれる膜蛋白質をウイルス上にディスプレイさせ、そのウイルスを直接ウイルス蛋白質トレランスマウス(別途開発)に免疫し、特異抗体を得ることに成功した。 また同様の技術を用いてZnフィンガー蛋白質(GATA family,核内受容体スーパーファミリー)に対する特異的モノクローナル抗体を作成した。すなわちZnフィンガー部分は相同性が高いため、N端あるいはC端をgp64にフュージョンさせた蛋白質を作成し、このフュージョン蛋白質がディスプレイされているウイルスをマウスに免疫することによって特異抗体を作成した。ヒトGATAファミリー1〜6に対する抗体を作成した。とくにGATA2はGATA3ともホモロジーが高く、特異的モノクローナル抗体は作成が困難とされており、本方法はホモロジーの高い遺伝子ファミリー蛋白質にも有効な方法として期待できる。 核内受容体スーパーファミリーに対する抗体も48種類中30種類に対して終了した。核内受容体に関して、網羅的に抗体を作成している例は世界になく、また免疫染色に使用可能な抗体も得られており、今後組織分布や細胞内局在などの研究に強力なツールになると考えられる。
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