研究分担者 |
下条 信弘 (下條 信弘) 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00080622)
山内 博 聖マリアンナ医大, 予防医学, 助教授 (90081661)
吉田 貴彦 旭川医科大学, 衛生学, 教授 (90200998)
相川 浩幸 東海大, 環境保健, 講師 (40102850)
石井 祐次 筑波大学, 社会医学系, 講師 (90253468)
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研究概要 |
【方法】アジア諸国のうち,中国やバングラディシュ等では高濃度の砒素を含む地下水汚染が頻発しており,国際的な自然災害汚染問題のひとつとなっている。一酸化窒素(NO)は神経伝達,血管調節,免疫応答等に重要な働きを担うガス状シグナル分子である。我々は中国内モンゴル自治区の飲水型慢性砒素汚染地域において,砒素曝露群の生体内NO代謝物濃度が対照群のそれの約半分まで低下していることから,砒素の長期曝露は血管調節系に重要な役割を演じているNOの産生低下を生じることを報告してきた。今回は飲料水の改善による慢性砒素曝露住民の生体内cGMP(NO産生量の指標)の濃度の変動を調べた。 【方法】中国内モンゴル自治区包頭市の慢性砒素汚染地域住民50名(男性22名,女性28名)を対象とした。これらの住民に対して中国の環境基準以下の砒素を含んだ井戸水を1年間供給した。 【結果・考察】飲料水改善前の砒素曝露住民の尿中無機砒素およびcGMP濃度はそれぞれ39±53μg/g of Cr.および0.31±0.23nmol/mg of Cr.であった。介入研究1年後に対象住民の尿中無機砒素濃度を測定した結果,介入前のそれの19%まで低下した。一方,cGMP濃度は0.62±0.25nmol/mg of Cr.であり,介入前より2倍上昇した(P<0.001)。個々のcGMP量の変動を見ても5名以外は全て増加していた。以上から、飲料水改善により慢性砒素曝露で低下した生体内NO産生は回復することが示唆された。
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