研究概要 |
同じスクリーンに投影しながら2組の被験者に気づかれることなく違う映像を別々に見せるという提示方法MORIテクニックを開発した。この提示方法を使うと被験者間に情報の食い違いを引き起こすことができる。その原理は、一つのスクリーンを介して、2組の互いに直交する偏光フィルタによって2つの映像提示ルートを作ることにある。この提示方法の原理、機材の詳細、活用の留意点などをMori(2003)に公刊した。 この提示方法を用いた目撃記憶実験を繰り返し実施した結果、目撃者の年齢、性別、性格特性に関わらず、目撃者は一緒に目撃していた他の目撃者に同調しがちであることが明らかとなった。これらの研究成果を、国際応用心理学会、筑波国際記憶会議、アメリカ心理学会年次総会などの国際学会で発表した。また、研究成果を学術誌に投稿した(Hirokawa, Matsuno, Ukita, & Mori,2003;Mori & Mori,2003)。 Mori & Mori(2003)では、138名の学生被験者を用いて2つの実験を行ない、一緒に目撃していた目撃者の人数の影響を調べた。実験1では目撃者が1対2に、実験2では目撃者が2対2に分かれる条件で、それぞれの目撃者の記憶変容を調べた。Mori & Mori(2003)とそれ以前に行なった研究(Kanematsu, Mori, & Mori,2003)との結果を総合すると、一人の目撃者は多数の目撃者の意見に一方的に同調しがちてあるが、同じ目撃情報を共有する別の目撃者が一人でもいれば、他の目撃者との話し合いにおいて他の目撃者が別の意見を述べた場合でも同調しにくいことが明らかとなった。
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