研究概要 |
本研究の目的は,ラットの時間弁別行動と脳波パターンの対応を検討することであった.ラットの時間弁別課題としては間隔二等分法,ピーク法,DRLL法等がある.間隔二等分法では2秒と8秒,ピーク法では30秒,DRLL法では4秒の設定時間でラットに学習を行わせた.その結果,どの方法,設定時間でも問題なく時間弁別課題の学習が成立した.時間弁別学習における行動特性については「生理心理学と精神生理学」雑誌にまとめた論文が掲載された. 時間弁別課題遂行中の脳波を同時計測してその脳波パターンを検討するために,平成14年度は刺激により誘発される電位成分の検討を行った.音刺激の呈示によって計時行動がはじまり,それ応じた脳内各部位の誘発電位成分も異なる.時間的認知的判断を反映すると考えられるP3成分については,海馬部位と前頭葉皮質において大きなP3振幅が計測された.また,時間弁別課題の場合には特に刺激のオンセット時よりもオフセット時からの処理が重要であることから,刺激オフセット後の事象関連電位のP3成分について検討したところ,前頭葉部位で時間弁別課題と時間弁別を必要としない統制条件の間に差がみられた.初年度の研究からは時間弁別課題において事象関連電位の差異が現れることが明らかとなり,2年目ではオフセット時の計時過程においても差が生じることが示された.海馬部位からの海馬θ波についても,計時行動においてパワが大きくなることが観察され,これは世界で初めて実証的なデータとして得られたものである.海馬部位が時間情報の処理にも重要な役割を果たしていることが,脳波活動からも示唆された.また計時刺激を音刺激だけではなく,光刺激を用いたときにその刺激に同期した脳波活動が観察され,それは平成14年度にアメリカ神経科学学会で発表した.また,間隔二等分課題においても時間情報の記憶処理との関連から検討を行い,最終年度に報告にまとめた.
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