研究概要 |
基準化脈波容積(NPV)は近赤外光を用いた光電式指尖容積脈波のac成分をdc成分で除すことで一心拍毎に算出される。本研究では、新しい血管弾性特性指標としてのコンプライアンス指数(CI;=NPV/脈圧)を導入した。指尖部動脈の圧-容積関係のモデルを作成し(V=a-b×exp(-nP))、3個の指数関数パラメータ(a, b, n)を用いて、NPVに対する基礎動脈血液量・脈圧・平均動脈圧の影響を調べた。 【実験1】被験者12名は2つの異なる水温(44℃,22℃)の水に測定手の反対側の手を浸漬した。それぞれ8分間の安静と浸漬において、指の位置を心臓の高さ、それより低い-15cm、-30cmに置いて測定した。90mmHgに対するCIの推定値(CI90)は22℃条件で有意に減少していた。 【実験2】CIの経壁圧(TP)に対する関数関係を調べるため、暗算作業(被験者16名)と反応性充血(5名)の測定を、カフ圧迫法を併用して行った。CIの対数変換値はTPに対して直線回帰を呈し、指数関数モデルを採用すると、安静に対して暗算では、パラメータa-32.5%、b-33.4%、n+15.3%であった。反応性充血では、パラメータa+61.1%、b+71.3%、n-33.1%であった。 【実験3】男子学生31名と中年男性9名を被験者とし、安静時における指数関数モデルの適合度とパラメータの群間差を解析した。その結果、中年群では、指数関数モデルの適合度は低下し、パラメータnが有意に減少することが判明した。 今研究ではNPVを応用して、指尖部の血管弾性特性を3つの指数関数パラメータ(a, b, n)に集約して記述する解析法を開発した。実験結果は、指数関数モデルの妥当性を支持するものであった。そして、ストレスと加齢の、指数関数パラメータへの影響は異なることが明らかになった。
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