研究概要 |
半球間の統合過程のメカニズムを明らかにすることが第1の目的であった.半球間の統合を求めた場合,半球内での統合を求める場合よりも効率が高いことが明らかとなっている(両半球分配優位性:BFA).これまで処理負荷が高くなるとBFAが大きくなると主張されてきたが,今回の研究から次のことが明らかとなった.未知の図形とラベルとを対連合させ,図形とのラベルとの照合課題を実施した.処理負荷を操作するために,対連合学習後に照合課題を実施した(テスト1).さらに過剰学習を実施した後,再び照合課題(テスト2)が実施された.テスト1ではテスト2に比べ,図形とラベルとの連合の強度が弱いため,テスト1の処理負荷は大きいと想定される.これまでのモデルが正しいなら,テスト1のBFAの方がテスト2よりも大きいことが予想された.結果は,テスト1で一側視野優位性が顕著で,テスト2でBFA方向への変化が見られた.これは,処理負荷の半球間での均衡が保たれていない場合各半球での並行処理が進まず,両半球処理の効率性上がらないとするYoshizaki(2000)の仮説を支持するものであった. 第2の目的は半球間,半球内の干渉作用の機構を検討することであった.ターゲットとディストラクターを同時に呈示し,ターゲット処理に対するディストラクターの影響を検討した.ターゲットとディストラクターを同一視野,あるいは別の視野に呈示することで,ディストラクターからの半球内干渉,半球間干渉を検討した.色名漢字をターゲット,色パッチをディストラクターにし,ターゲットのインクの色同定を求めた場合(加藤他,2001),両視野条件の方が成績が高いこと(BFA),半球内の干渉の方が大きいことが明らかとなった. 第3の目的は,内容語,機能語の半球間の表象の分布について検討することであった.内容語の表象は左右半球に分布していることが明らかとなった.
|