研究概要 |
本研究においては,大学入学を契機として生じる国内の移動に伴い,大学生活,新しい地域社会,家族から離れた生活という3つの新奇な環境が生じることを前提として,関西と沖縄の大学における地元出身者,同一地域文化圏と目される地域の出身者,それ以外の出身者についてそれぞれが異なった水準の異文化に遭遇し,様々な解決すべき問題に直面すると考えた。本研究における主たる知見は以下の通りである。まず,2つの地域的文化(関西と沖縄)において,大学生が直面する問題点には大きな共通性が見られた。また,移動先までの距離(時間や費用)が大きくなるにしたがって,問題点も多くなることが確かめられた。このような問題(生活上の不具合や不適応感)は移動先における滞在期間が長くなるにつれ,数の上では解消していくが,新たに問題が発生することがある。 人は移動により新しい体験をするが,ほとんどの場合,新しい対処の仕方を憶えて乗り越えていく。もちろん,対処せずにすますという方法もある。問題を回避する,我慢するなどがそれに当たる。今回面接によって明らかになったことは,それぞれその個人はその個人に特有の問題に遭遇し,その個人に特有の方法で対処しているということである。援助者を見いだす努力も見られるし,実際,多くの場合に援助者を捜し出すことができる。しかし,援助者がなくても,問題に対処はできる。対処の質に違いがあっても,問題が著しく困難でなければ乗り越えられるのである。 これらのことから,海外への移動に伴う異文化適応と同様のプロセスが国内の移動においても見られること,また,新しい生活環境への適応は単純な異文化理解によって成立するのではなく,個々の問題を解決していくことによって獲得されることが示された。
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