研究概要 |
本研究は,青年期の親子関係について,子と親の双方がらデータを収集し,双方が認識する関係について生涯発達心理学的観点から検討を行った。2回の調査を実施し,親子関係の認識,性役割観,夫婦関係の認識,well-being,人口統計学的変数などについてデータを収集し,相互作用の観点から分析した。主要な結果は以下の通りである。 (1)多くの父親は,家事や仕事,子育てについて伝統的性役割観をもっていたが,多くの母親はそうではなかった。これらはある意味で隠れたカリキュラムとなり,子の性役割観や男女平等観に影響を与えた。また,初経や精通は,青年の側から親子関係,とりわけ異性の親との関係を変化させる契機になっていた。しかし,従来から言われてきたような親に対する反抗や関係性の混乱はみられなかった。 (2)多くの親はこどもが十代になると,親子関係がネガティブになると考えていたが,こどもの側にはそうした考えはあまり見られなかった。 (3)青年期の子どもをもつ親には,高齢になる自分の親もおり,自分の親や自分の子どもについての発達的,心理的問題を有することがあった。これらの問題を親たちに大きなストレスとなるため,メンタルヘルスの問題を引き起こすこともあった。このように,自分のこどもや自分の親に関わる出来事が,子どもとの関係に相互作用し,多様な影響を与えるものと言える。
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