研究概要 |
ストレスを有効に低減するためには,ストレス状況の特性に応じた柔軟な対処採用が必要である。しかし,タイプAや悲観主義といった個人特性はストレス状況の制御可能性認知が不正確であることから,不適切な対処を採用しやすいと考えられる。また,他者からの期待や組織風土といった社会的圧力も,柔軟な対処の採用を阻害し,特定の対処方略を採用する圧力になりうる。個人特性や社会的圧力が原因で状況に応じた適切な対処ができないならば,ストレスの増大に結びつくと考えられる。本研究は,対処採用の固執に影響する個人特性と社会的要因の検討を行うことを目的とした。個人特性としてタイプAや悲観主義を取り上げ,社会的要因として役割期待や役割認知のずれ,組織風土を取り上げた。研究の対象には大学生と看護師を用いた。得られた結果は,以下の通りである。タイプA者は問題焦点型対処を採用しやすく,悲観主義者はストレス状況を制御不可能と認知するために情動焦点型対処を採用しやすいことがわかった。このように不適切な対処方略を採用していることから,ストレス反応が高まることが示された。社会的要因として,看護師本来の仕事ではない管理業務に対して他者から期待されることや,看護職を女性的な仕事であるとみなすことによって,ストレスが高まることがわかった。また,サポート的でない組織風土は,ストレッサーを脅威的だと評価することにつながり、ストレス反応を高めることが示された。このように,対処の柔軟な採用は,個人特性や社会的圧力により阻害され,その結果として,ストレス増大に結びついているといえる。
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