研究概要 |
本研究は,主に以下の2つの研究から構成されている。 研究1(第1部)は,総合的な学習の時間を利用して,中学校1年生を対象としてストレスマネジメント教育の一環と考えられるソーシャルスキル教育を実施した。その結果,(a)本研究で実施したソーシャルスキル教育による生徒のソーシャルスキルの変化は,下降群,低得点上昇群,高維持群および高得点上昇群の4つのタイプに分けることができ,対象生徒の45%の生徒はソーシャルスキルが上昇し,31%の生徒はそれを高く維持していた,(b)ソーシャルスキルが低い水準から向上した生徒は,孤独感が低減し,知覚された友人サポートが上昇するなどの主観的適応感が改善していた,(c)ソーシャルスキルのレベルは介入後3ヶ月にわたってある程度維持されていたこと,などが示唆された。 研究2(第2部)では,中学2年生を対象としてより包括的なストレスマネジメント教育を実施した。その結果,(a)授業内容への興味・関心が高かった生徒はストレッサーに対して逃避・回避的な対処をあまり行わない,(b)今後も授業を受けたいと感じていたり,自己のストレスの理解度が高い生徒は教師からのサポートを高く知覚し,ストレッサーへのコントロール感が高いことなどが示された。しかしながら,今回実施したストレスマネジメント教育は,少なくとも本研究で用いた効果判定指標にほとんど影響を及ぼさなかった。今後学校においてストレスマネジメント教育を実践していく上で,ストレスマネジメント教育に対するニーズの問題,「予防教育」的観点からのプログラムの構築,効果判定上の問題などを再検討する必要性があるものと思われる。
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