研究課題/領域番号 |
13610154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育・社会系心理学
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
大嶋 百合子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (50326980)
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研究分担者 |
平川 眞規子 東京国際大学, 国際関係学部, 助教授 (60275807)
伊藤 恵子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (80326991)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2003年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | バイリンガリズム / 動詞の項構造 / 空項現象 / 幼児 / 自然発話 / インプット / 日英語比較対照 / 縦断研究 / バイリンガル / 幼児期 / 空主語・空目的語 / 横断研究 |
研究概要 |
<日本語モノリンガル児と英語のモノリンガル児における動詞の項の出現と省略の言語比較対照研究> 日英語モノリンガル児それぞれ6名について、21ヶ月と36ヶ月時点における自由遊び場面のビデオ録画に基づき作成された母と子の発話データを(1)項の情報の新旧,(2)表現のタイプ(語彙化、代名詞化、省略化)についてコーディングした。その結果、21ヶ月時点においては、日英語いずれのモノリンガル児においても旧情報を担う項は省略される傾向がみられたが、36ヶ月時点では、英語モノリンガル児は代名詞を使用し、日本語モノリンガル児は省略を続けるという傾向がみられ、それぞれの言語固有のルールを既に獲得していると解釈できる。一方、新情報を担う項については、英語モノリンガル児は36ヶ月時点で語彙化をするようになるのに対して、日本語モノリンガル児は36ヶ月になっても、省略する場合が多く、英語モノリンガル児の方が目本語モノリンガル児より、談話・語用論にもとづく動詞の項の使用の獲得が早いことがわかった。また、モノリンガル児の結果はいずれの言語においても母の言語入力の結果と非常に似ており、日本語モノリンガル児の獲得の遅れは親の入力が原因ではないかということが示唆された。 <日英語バイリンガル児における動詞の項の出現と省略-日英語モノリンガル児との比較-> バイリンガル児1名の動詞の項の出現と省略を調べるために、31、32ヶ月時点での発話データを上記と同じ方法で、分析した。その結果、バイリンガル児は、一般的な言語発達の水準はモノリンガル児にくらべ10ヶ月以上遅れているにもかかわらず、動詞の項の表現タイプに関しては同年齢の言語発達水準の高い各言語のモノリンガル児と同じような使用ができることがわかった。ただし、談話・語用論にもとづく動詞の項の表現タイプの獲得は上記のモノリンガル児の結果と同様に英語の方が日本語に比べて早かった。しかし、日本語と英語では項の表現タイプのパターンが全く異なり、しかも、それぞれのパターンは親の言語入力のパターンと酷似しており、この日本語の遅れは交差言語干渉よるものではなく、それぞれの言語入力から別々に同時獲得したためと解釈できる。 <日本語モノリンガル児の初語前と後における母親の言語入力の変化と動詞の項構造の獲得> 2名の日本語モノリンガル児のそれぞれ生後10か月時点と21か月時点での各児の母の発話データと32ヶ月時点の子どもの発話データを分析対象とした。上記のコーディング法に(3)自動詞・他動詞の区別とその項の格(主格・目的格)を加え分析した。その結果、子どもが初語を発話する以前は母2名とも,デュボアの「好みの項構造」が確認された。すなわち他動詞の主語は,談話においてすでに述べられた旧情報を担うことが多く語彙化されにくかったが,他動詞の目的語と自動詞の主語は,他動詞の主語にくらべ新情報を担うことが多く,語彙化される傾向が強かった.しかし、子どもの初語発話以降の言語入力には個人差が認められ、しかも、母によるこの言語入力のあり方と子どもの「好みの項構造」の獲得との間に対応が観察されたことから、子どもは養育者の言語入力から日本語固有の「好みの項構造」を獲得している可能性が示唆された。
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