研究概要 |
本研究の目的は全国408箇所の介護老人保健施設を対象に、施設利用者の終末ケアの状況を調査した。平成14年厚生労働省の調査によれば、平成元年以降、介護老人保健施設での死亡状況が確認されてきている。(平成元年147名、平成5年1,081名、平成10年3,627名、平成12年4,818名)。この統計から、平成12年介護老人保健施設の死亡状況は、施設内死亡割合の1.9%に当たる。本研究から回答があった98箇所について、施設における死亡状況、終末の看取りの状況、死亡までの入所期間及び介護保険が開始前と開始後の違い等の分析を行った。以下の点が本研究を通じて明らかになった。 1.回答があった98施設中34施設において184名が死亡しており、そのうち介護老人保健施設で死亡した者は81名であった。 2.死亡者の年齢をみてみると、後期高齢者の死亡が多く80歳以上が87.7%であった。 3.死亡前では痴呆の状態が9割以上であり、寝たきりが77.8%であった。 4.施設入所後1年未満の死亡が54.8%であった。 本研究から、介護老人保健施設はその理念にある家庭復帰を目指す施設であるが、介護保険施行後、家族が施設に任せる傾向がでてきており、家族が希望すれば終末介護を行う施設が出てきている。それゆえ、介護老人保健施設は従来の基本理念に加え、施設利用者の高齢化、介護の重度化、さらには介護の延長線上にある、施設利用者の普遍的課題として「終末ケア」が新たな課題であることが本研究より明確になった。
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