研究概要 |
本研究の目的は,1999年改訂の学習指導要領に基づき2002年から実施された「学校設定教科・科目」について,その設置の現状とねらい・意図,運営の在り方,評価,今後の課題を明らかにすることである。研究の方法は,教育委員会を対象にした資料収集のための調査(42都道府県,9政令指定都市が回答)と,「学校設定教科・科目」の設置校(設置学科)に対する調査である(19都道府県,5政令指定都市の488校を抽出/有効回答校数302校)。研究の結果,得られた知見は,以下の通り。(1)この教科・科目のカリキュラム上の位置づけは,当該学科のカリキュラムを「発展させる位置づけ」「補完する位置づけ」「特徴づける位置づけ」,それぞれに分かれている。(2)選択科目として設定される場合が多いが,学科によって異なっている。(3)「その他の教科・科目」を引き継いで設置される場合が多いが,実質的な変化はさほどない。(4)因子分析の結果でみると,この教科・科目の設置のねらい基軸は,「学習領域の拡大」「就職・資格取得への対応」「高等教育進学への対応」「基礎学力育成」にある。(5)意図の基軸は,「学科のアピール」「生徒の実態への対応」「指導体制の強化」にある。(6)運営の在り方については,科目に,従来の教科・科目の枠を超えた内容を含ませたり,独自のテキストを作成・使用したりするなどの点で特徴的である。(7)実施体制(担当教員)の面では,外部講師に頼らず,常勤の教員で対応できる範囲内で教科・科目を設定する傾向がある。(8)設置数や履修方法,記録の蓄積,評価の点では,回答が分散しており,試行錯誤の段階にあることが推測される。(9)設置・運営についての評価に関しては,生徒に対する効果という点では,概ね満足な状況にある。(10)社会的基盤の確保という点では,評価が低く,問題を残している。(11)多くの学科で直面していうる問題点は,適切なテキストと担当者の確保である。
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