研究概要 |
日本の現状を把握するために,平成14年度に全市・区教育委員会に対して,所管する小・中学校予算に関するアンケート調査を実施した。回答があった576教委のうち,学校の自由な裁量を認める予算枠を設けている学校が34.7%あることがわかった。また通常配当している予算について,校長の専決で予算を執行できるようにしている教委は339あり,そのうち物品の購入について校長の専決を認めている例が331,また130の教委では軽微な工事についても校長の専決を認めていることがわかった。しかし,校長の専決で執行できる金額の上限は一件あたりおおむね20万円未満としている教委が約50%であることなどを明らかにした。さらに、ロジスティック回帰分析を行い財務分析の指標を作成するための作業として、校長の専決で執行できる予算額の大きさは、学校数の多さや、特色ある学校づくりなど学校の自律的な執行を委ねるような施策の有無などに関連性があることをなどの知見を得た。 米国の公立学校財務研究については,日本とのしくみの違いなどにより直接的な比較が難しいことから,米国の地方教育委員会の財務報告に用いられている米国教育省教育統計ナショナルセンター発行の財務分類指標に注目し,その一部の訳出をおこなった。日本において事実上同様の役割を担っているともいえる地方自治法施行規則における,いわゆる「目・節」の区分との対比については,米国の場合が財源別,事業活動別に分類され,したがって学校教育専用の分類区分となっているのに対して,日本の場合は,教育委員会以外の他の部局も共通して適用される区分であり,日本においても各教育活動別の財務報告を考案することで,各教育活動におけるコスト分析が可能になるとの課題を提起することができた。
|