研究課題/領域番号 |
13610536
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
中国語・中国文学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木津 祐子 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90242990)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2002年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2001年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 中国 / 琉球 / 官話 / 漂着 / 周縁 / 境界 / 家譜 / ピジン / vehicle language / 通事 / 中国語 |
研究概要 |
本研究は、中国の規範言語とみなされてきた「官話」が、中国とその周縁地域においていかなる位相を呈していたかを、琉球を手がかりに明らかにしようとするものである。研究は以下の点から実施した。(1)明清期の琉球で、誰が「官話」を用いたか、(2)各使用者がどのように「官話」を用いたか、(3)その「官話」位相にどのような特徴が見えるか。基礎となる史料は、沖縄県立博物館、県立図書館、さらに石垣市立八重山博物館などで収集し、次の成果をあげることが出来た。 (a)八重山士族の家譜は、官話による記事を多く含む。その多くは、中国人及び琉球人の黄海での漂流を、極めて特徴ある文体で綴ったものであった。その中でも最大の収穫は、中国江蘇省通州の商人姚恆順の陳述書を付す家譜の発見で、乾隆年間の官話学習とその使用を探る大きな手がかりとなった。 (b)沖縄県立図書館には、官話で記されたイギリス聖公会の宣教師ベッテルハイムと琉球の通事(中国語通訳)間の書簡が所蔵され、官話や日本語などの語学学習について論じた内容も含まれる。 (c)琉球から中国に漂着した難民の呈文(沖縄県立博物館や八重山博物館、また琉球大学の所蔵)には、中国の役人(通事を介す)との訊問の会話記録など、興味深い記事が見られた。 これらの「官話」に関する諸史料は、中国東南海域に位置する琉球列島に、「官話」が境界を超えて広く受容され、かつ多様な受容形態を見せていたことを示す。まさに境界を超える「境界性中国語」(vehicle language)として、「官話」は単に規範言語であっただけではなく、口頭また書記の場でも、現実的なコミュニケーションツールであったことが見て取れる。このように、八重山という琉球のさらなる周縁での事例から、「官話」の境界言語としての一側面を明らかにすることができた。
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