研究概要 |
本報告書は第1部,第2部および第3部(添付CD)に分かれている。第1部は研究成果の一部として発表された論文を収録したものである。第2部は科研費を使用した本研究の研究過程で作成されたデータベースについて記述している。データベースはインターネット上で成果の一端として公開されており(http://www.okayama-u.ac.jp/user/rons-ard/index.htm),本報告書末尾に添付されたCDは公開されたデータベース本体を収録している。 第1部ではロンサールRonsardのオード集5部作中4部作を対象に同一表現の検索を行った結果を論じている。ロンサールの多用するよく似た表現は、具体的な検索手段の欠如により,その実体は明らかではない。論文では『オード集第1の書』から『オード集第4の書』までの4詩集を対象に作成したデータベースから同一表現の検索を行い,m'envoie en la barque de perdurable exilとm'envoyez en la barque de l'avare nautonnierの二つのよく似た表現を見い出した。ward indexを使用して全作品内での同様な表現を探すことにより、他にも3例を発見した。これらの表現は原典批評版を編集したローモニエLaumonier.P.も、関連する表現としては捉えていない。さらにはロンサールの同時代人であるデュ・ベレーDu Bellayにも同様な表現を探すことによって新たに5例を発見した。これらの表現またデュ・ベレーの原典批評版の編者であるシャマールChamard.E.も関連あるものとはしておらず、これらの表現の間にある関連性は指摘されないままになっていた。さらに、第1部では、これらのよく似た表現は二人の詩人の間でも、作品内においても、出現時期が特定の数年間に限られていることを示している。これらの表現には古典作品からの影響があることは否定し得ないが、本稿では上記のようにこれまで注目されることのなかった一つの表現形式が存在していることを示した。 第2部では論文発表の課程および科研費補助を受けた研究に伴って構築され,公開を開始した10万件規模のデータベース(上記URL参照)の概要について述べている。ロンサールのデータベースの現状,Webとの関連,本公開データベースの作成経過,規模,収録データ,データ分類コード,検索エンジン,使用法,必要とされる機器等について述べたものである。 第3部は公開されたロンサールのデータベースをCDの形で添付している。本来はWeb用に開発されたものだが,CDを使用することにより,ネットに接続せずともデータベースを利用することができる。
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