研究概要 |
研究期間における成果としては,アンドレ・ジッド『狭き門』の本文・異文の精密な一覧を作成したことと,同作品にかんする書評類の分析および関連書簡の具体的調査との2つに大別される。 まず前者としては,パリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫所蔵の初期草稿やパリ国立図書館所蔵の自筆断片稿・タイプ完全稿等にもとづき作成していた『狭き門』の本文および異文の暫定的な一覧を,新発見の雑誌初出テクストの校正刷を参照・調査することで,さらにいっそう精密なものとした。これによって『狭き門』のテクストがどのように生成し変化していったかが,いっそう容易にとらえられるようになった。 また初年度・第2年度に収集した書評類の分析によって『狭き門』にたいする初期の受容傾向を大まかに把握するとともに,関連未完書簡の具体的調査にかんしては,各年度ともフランスで実地調査をおこない,ドゥーセ文庫所蔵の書簡数百通の筆写を完了した。現在はこれらの書簡に付注するための文献的・実証的調査を進めている。 いずれの資料体も『狭き門』の生成や受容にかんする第一次資料として決定的な重要性をもつものであり,すでに少なからぬ新事実が発見・解明されている。
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