研究概要 |
本年度は,研究2年目にして最終年度にあたり,研究の成果を2002年7月に,メッシナ大学において開催されたAIEO(国際南仏語南仏文学研究学会)の第7回国際学会で発表した。そしてその反響などを勘案したうえに訂正加筆した発表テクストを,主催者のサヴェーリオ・グイダ教授(メッシナ大学)に同年11月末に送付した。2003年末にモデーナのMucchi社より刊行される予定のActesに,この原稿が収録されるはずである。 付随的に,このオジル・ド・カダルスの作品を含む,C写本ぜんたいについて,これまでの私の研究をまとめて前書きとしたアンソロジー『トルバドゥール詞華集』(大学書林,2003年1月)を出版した。これは,C写本の収録する作品の内容を,C写本の性格が比較的あらわれやすいようなかたちで抜粋して編集し,校訂したものである。また,AIEOの現会長であるピーター・リケッツ教授(バーミンガム大学)に捧げられる論文集に,ペイレ・カルデナルの作品(いわゆる「寓話」とよばれる作品)の校訂と解釈を寄せた。これはCにかぎらず,トルバドゥールの写本ぜんたいについての私の研究の一環をなすものである。 今回の学会では,主催者であるグイダ教授による,同時期に発表されたTrobador minoriという著作に同じオジル・ド・カダルスの作品を論じた大部の研究が含まれており,教授の研究と私のそれを比較するというまたとない機会をあたえられた。グイダ教授の研究は,私の踏み込めなかった,このトルバドゥールの伝記的な研究があること,またイタリアで隆盛をきわめている「新ラハマン法」ともいうべきテクスト設定の方法をあらためて知ることができた。
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