研究概要 |
南琉球、宮古諸島方言に属する来間島方言の話者は60代以上の数十名のみであり、中年層以下の者はすでに標準語との中間方言に移行している。 2001・2002年度の2年度にわたり70・80代の伝統方言を話す話者から音声・文法と語彙の一部を聞き取り、記述した。全戸のヤーヌナ(屋号)についても、各戸の配置図とともに記録した。 音声面の特徴は、母音では5母音の他、摩擦的操音を伴う狭口中舌母音が存在すること、狭口母音の[i,u]のみならず、広口母音の[a]においても無声化が起こることである。 子音に関しては唇歯無声摩擦音[f]、唇歯有声摩擦音[v]が存在する。また、[v,m]は成節子音となる。 これらの特徴は、例えば、宮古島本島の平良市内ではほとんど失われてしまった宮古諸島方言の古い姿をよく残しているものである。 文法面では用言の活用形、助詞・助動詞、可能表現を文例とともに記述した。 2年目には、音声、文法の特徴を反映する項目について高年層の男女7名の話者の発音をデジタル録音及びデジタルビデオ録画を行った。併せて、来間島のわらべ歌及び来間島の島民の由来談も収録した。 これらの録音、ビデオ記録はこれまで行われたことはなく、来間島方言の重要な資料となる。既に収録済みの他の宮古諸島方言、すなわち、大神島、池間島、伊良部島、宮古島狩俣の猪方言の録音・録画と比較考察することにより、宮古諸島方言の姿を総体的にとらえることができる。
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