研究概要 |
本研究の主目的は、脳科学基礎論としての自然言語研究の可能性を探ることであった。現時点において可能な経験科学的手法を用いた自然言語分析の基本は、統語的なテストに対するヒト脳の文法容認性反応を詳細に調べることである。前回の科研費補助から継続している統語テストの吟味と整理を続行した。このプロジェクトは、『A Reference Guide of Diagnostics in Generative Syntax -Data from English, Hindi, and Japanese-』として原稿を完成させ本補助金報告書としてまとめた。この統語テスト集に関しては、桃山学院大学海外長期特別研修補助金により、米国MITにおいて同大学言語学科大学院Noam Chomsky教授にアドバイスを受け、出版を勧められた。同時に個別的には、自然言語における対称性のくずれを語順構造の観点から分析し、また、自然言語における最も対称度の高い「対称的構成素統御」(symmetric c-command、或いは、mutual c-command (Miyagawa(1989))の妥当性を詳細に分析した。この研究成果は、Arikawa(2001)(研究論文)、Miyagawa and Arikawa(2003)(発表)、Arikawa(2004a)(研究論文)、Arikawa(2004b)(研究論文)で報告した。また、研修期間中にMITにおいて、同大学大学院宮川繁教授とともに対称的構成素統御に関する共同研究を行い、その成果は、Miyagawa and Arikawa(2004)として原稿をまとめ、出版の予定である。(草稿担当:有川)
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