研究課題/領域番号 |
13610689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大貫 徹 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (30203871)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2002年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2001年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | コンラッド / ロチ / 帰還せざる白人男性 / 西洋植民地主義 / 闇の奥 / アフリカ騎兵 / ロビンソン・クルーソー / ガリヴァー / 母なるものへの憧憬 / ハーン |
研究概要 |
西欧による新大陸発見以来、多くの旅行記が書かれてきた。そこで展開されている大きなテーマは言うまでもなく「他者との遭遇」である。しかし実際にはそうしたテーマに肉薄しているのはきわめて少ない。19出紀末にピークを迎える西洋帝国主義=植民地主義、そこではアフリカやアジアを舞台として「他者との遭遇」がいろいろな形で描かれてきた。しかし「他者」とは言いながら、ある限定した形での「他者」との遭遇しか結局は演じていなかったのではないだろうか。実際、「良き野蛮人」という表現に見事に表われているように、これまでは「他者」が持つ本来の恐怖が描かれてこなかった。さらには西欧という内部空間を越えているうちに、いつしか、「外部空間」に侵入し、ついには帰還不能となってしまうことへの恐怖も描かれてこなかった。しかし今日考えるべき旅とはむしろ「帰還不能の旅」である。というのも、帰還不能の旅こそが、世界の現実を如実に表わしていると思うからである。世界は透明なコミュニケーションに包まれた平和な存在に満ちているばかりではない。むしろ至るところにディスコミュニケーションがあり、暴力がある。実際、20世紀は二度の世界大戦を含む大量破壊と大量虐殺の世紀であった。その結果、人々は至るところで難民となり、否応なしに越境せざるを得ない状況を経験した。こうした状況を考えるならば、たとえばロビンソン・クルーソーのような調和型の円環的旅ではなく、ガリヴァーが経験したような「帰還不能な旅」こそが今日的な移動の原型であることは明らかである。こうした観点から、ジョウゼフ・コンラッドJoseph Conradの『闇の奥』Heart of Darkness(1899年)に重点を置いて、「帰還せざる白人男性」の物語のアーキタイプを明らかにすることに成功した。とりわけ『闇の奥』は、「帰還せざる白人男性クルツ」と「帰還することができた白人男性マーロウ」という二人の白人男性が存在することから、こうした問題を明確にする上で大いに参考となった。さらにはピエール・ロチの『アフリカ騎兵』(1881年)にも言及した。このテーマは近代日本文学に描かれた旅においても有効であると考え、それらについても言及した。
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