研究課題
基盤研究(C)
本研究は、行政機構内部での紛争解決において裁判所が果たすべき役割を比較法的に検討するものである。この問題に関しては、(1)異なった行政主体相互間の紛争と、(2)同一行政主体内部での紛争を区別する必要がある。本研究ではまず(1)の課題に着手し、一定の成果を得ることができた。(2)は今後の課題として残されている。(1)については、特に日本と関係が深いドイツ法の学説史的研究を行い、次の成果を得た。神聖ローマ帝国末期においては国と地方公共団体(特にゲマインデ)の関係は不明確だったが、帝国が崩壊し、主権国家が成立すると、国家権力一元説が有力化し、ゲマインデを国家機関とみる見解が一般的になった。ゲマインデに政治的な性格を認める説や、自然法論により固有の自治権を肯定する説もあった。ドイツが再び統一され、第二帝国が成立すると、歴史法学の立場から固有権説も主張されたが、法実証主義が主流となり、国家機関説が確立した。しかし他方で、国家権力一元説を前提としつつ、自治事務については地方公共団体に公権を認める説(折衷説)が有力に主張され、これがヴァイマル期において通説となった。こうした学説を前提として、第二次世界大戦後、行政訴訟に概括主義が導入されると、国地方公共団体間の訴訟は当然のごとく容認されることとなった。以上の研究から日本法に対する次の示唆を得た。第一に、ドイツではヴァイマル期に国地方公共団体間の訴訟を認める素地ができていたことであり、地方自治の保障が格段に強い日本国憲法の下ではこの種の訴訟を認める必要が高いことを裏付ける。第二に、ドイツでは国家権力一元説を前提としつつ国地方公共団体間の訴訟が肯定されていることであり、これは日本の一部の学説のように地方公共団体は私人としてのみ国に対して訴訟を提起しうるとする見解が根拠薄弱であることを示唆するものである。
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法律時報 77巻3号
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北大法学論集 56巻3号(刊行予定)
120000960154
Horitsu-Jiho Vol.77 No.3
The Hokkaido Law Review Vol.56 No.3 (in preparation)
北大法学論集 56巻2号(発表予定)
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Min-Sho-Ho-Zasshi Vol.128 No.2