研究課題/領域番号 |
13630016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済理論
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
赤林 英夫 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (90296731)
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研究分担者 |
グレーヴァ ヘンリク 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (60280905)
グレーヴァ 香子 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (10219040)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2001年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 労働 / ゲーム理論 / 情報 / 不完全市場 / 戦略的行動 / マイクロデータ / 転職 |
研究概要 |
本研究では、不完全市場を前提とするゲーム理論他の応用ミクロ経済理論の成果を利用して、労働供給と探職行動、更にはそれに伴う労働者の移動や入職等の基本的メカニズムの再検討を行い、労働市場政策を「戦略的」側面から再評価を行うための基礎的研究を行った。 まず、NLSY等の米国の家計データと、家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を利用して、統計分析を行った。その結果、賃金以外にも、労働者がおかれた状況が転職に影響をおよぼすことなどが見えてきた。企業の規模についても影響があることが示唆された。これらの統計分析に基づき、"Job Search and Firm Size Effect in Japan" (by Akabayashi, Fujiwara-Greve and Greve)という論文を執筆、現在改訂中である。そこでは、単純な非線形回帰分析により、個人の転職の確率が、その人の学歴や労働時間、さらには企業の規模に、影響を受けることがわかった。大企業ほど転職の可能性が低いことは、転職が少ないという評判が、個人の会社に対する信頼に反映し、その結果、会社の規模が大きくなるという理論と矛盾しない。そこで政策的には、このような入離職情報の積極的な開示を進めることが、労働者・企業の双方にとって有益であることが示唆される。さらに、このような実証研究を基礎付ける転職の理論として、労働者一人一人をプレイヤーとし、いくつかの環境パラメターを設定した上で、評判の形成を繰り返しゲームの下で再現させる理論の論文(Takako Greve)を執筆した。 さらに、家計内の戦略的リスク回避と出稼ぎ行動の評価のために、南アフリカ共和国の家計調査を利用した分析を行った。分析に先立ち、不完全労働市場における最適ポートフォリオとしての出稼ぎ行動のモデルを構築した。5年分のデータを用いた統計分析の結果の骨子は「出稼ぎ労働の経済学-南アフリカ共和国の事例」(赤林英夫)という論文、分析の詳細については、"Apartheid and the Motivation of Migrant Workers"(by Akabayashi and Suga)という論文にまとめた。そこでは、保険市場が不完備の状況下で、家族内で所得リスクをヘッジするための出稼ぎ行動の存在が明らかになった。さらに、1994年のアパルトヘイト崩壊後に、黒人にとっての出稼ぎ労働の経済学的意義が変化していることが確認された。政策的には、出稼ぎ労働とそれに伴う家族の不安定化を軽減するためには、所得の安定化が必要であることがわかった。
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