配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
報告書は7つの章で構成されている.第1章では本研究の目的および2章から7章までの6つの論文の要点をまとめている.2章「年金と経済成長-財源調達の視点から」では,賃金所得,資本所得,包括所得という3つの年金保険料ベースを想定し,年金制度の成長率効果を分析している.経済発展に応じて保険料ベースを調整することで年金の成長率効果を引き出せることが示されている.3章「年金と経済成長-家族制度を考慮して」では,実証分析に則した労働期の2方向の家族内移転をモデル化し,年金の経済効果を分析している.もっとも強い政策的含意は,教育効果が低く経済が低位の停滞均衡の罠に落ち込んでいるとき,年金制度を整備し引退所得を保証することで高位の成長均衡に離脱できることである.4章「最適な年金制度」では,年金を用いて社会的最適を達成できるかどうかを議論している.年金制度は人的資本蓄積の世代間波及効果という外部経済効果をある程度内部化できるが,年金だけでは社会的最適は実現できない.しかし,資源や時間の配分に関しては有効な政策であることが示される. 5章「公的介護保険と経済成長」では介護保険の経済効果を分析している.年金と同じように,介護保険制度は経済を低位均衡の罠から成長均衡へと導くことが示される.さらに,実物で給付される分,介護保険の方が年金よりも成長率効果が大きいことが示される.本章の結果は現行の実物給付方式を支持するものである. 6章「雇用保険と年金の制度改革」では,改革期のどの世代も支持するような制度改革のあり方を議論している.職場での労働参加が集積の利益を持つ場合,失業率を下げるとともに失業中の労働者の一般技能を高めるような政策が有効であることが示される.本章の結論は社会保障制度は世代対立を生む制度ではなく,適切に運用すればむしろ相互扶助的な制度として機能することを意味するものである. 7章「経済成長と所得分配」では,人口経済学の視点から経済成長と所得分配の関係を分析している.モデル分析によると,高齢化が進むにつれて成長率が鈍化するとともに所得格差が拡大する.年金や介護保険は労働世代から引退世代への所得移転政策であるから,高齢世代の所得が改善し若年労働世代が相対的に貧困化すると世代対立が深刻になり制度の存続が危うくなる可能性がある.この懸念を払拭したいと考えるのであれば,主な貯蓄主体である若年労働者に有利な政策,例えば貯蓄減税などをおこなう必要があることが示される.
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